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リリー・フランキーの東京タワー。

まだ、あたまがぼおっとする・・・。
あたまの先まで熱に覆われていくような
五感すべてが飲み込まれていくような
こんなにも惹きこまれた作品は久しぶり・・。

リリー・フランキーさんの
 「 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 」 

気になって早々に手元に置いていたのだけど
そのまま部屋の棚に放置したままだった。
というのも、本帯を見て少し躊躇していた。
あまりにも濃密な内容の様子が垣間見れたから。
じっくり読める日にしよう、と思ったまま
気づけば2ヶ月も放置していた。
でも、今日は本が呼んでいる
そんな気がして。


カバーをはがすと、中は赤い装丁…めずらしい・・。
そして表紙を開けると街を見下ろす写真が一面にあった。
あぁ・・気持ちがこもっているんだなぁ。
作り手さんの本に対する丁寧な思いがつたわりますよ・・。


「 東京タワー 」は 自分の中の視点を通して
母親や父親を軸として
家族との日々が描かれている自伝的小説で。
時間を振り返りながら、そして消化しながら
淡々と書き綴られている。

けれども、この作品。
淡々と描かれていても
そこにはひとの感情を強く揺さぶるほどの
静かでありつつも
熱い思いが流れていて。
でも
ただただ、作者リリーさん自身の熱い想いを
押し付けるというのではなくって
またその自分自身を
離れた位置から客観的に見るような冷静なまなざしをも
同時に存在していて。

だからこそ、読み手の側も重いものを全て背負うことなく
読み進んでいける。
ページを重ねていくごとに
何かにとりつかれるかのように、目を離すことが出来なくなる。
まるでその時代ごとに自分もいるような、そんな不思議な感覚さえおこる。
オカンの葬式に参列しているような、そんな気分。

リリーさんのことばには、本当に不思議な力があるように思う。

読む人のぞれぞれの立場や役割によって
惹きこまれる人物が違うかもしれない。
(圧倒的にオカンの存在がすごい!けれど)
独身の男の人はリリーさんの思いに近づくかもしれないし
お子さんがいる人はオカンの思いに共感するかもしれない。
そして父親という立場の人はオトンの思いに考えさせられるかもしれない。
それぞれの 「 にんげん 」 が文章の中で
強く息づいているのだけれども
もしかしたら読み手は
自分の家族や親子というものを
瞬間的にそこに映し出しているのかもしれないなぁ・・
とも思ったり。

読んでいる最中でさえ
なんだか 「 家族 」 や 「 親子 」 というこの不思議な関係を
考えさせられますよ?

身体がこの世界からなくなっても
引き継がれていく、時間と想い。
その人が生きた証を、自身に刻んで
またその思いが伝えられていく。
こうして人と人が繰り返し繋がってきたのだと思うと
自分の中に脈づくものの不思議さというものを
あらためて考えさせられる。

ものすごくストレートで、無駄なものが削ぎ落とされている
この作品。
すごいです。リリーさん・・・。
わたしも、友人みたいにすすめます。

「 これ、絶対泣くよ? よんでみて? 」

追:「 ほぼ日刊イトイ 」 で、リリーさんとイトイさんの対談集が
   のってました。
   よければ、のぞいてみてください☆
by uminomiti | 2005-10-29 11:10 | なるほど。
ふと、なんとなく考えたこと、感じたこと、な日々。

by uminomiti